
酔い止めを飲んで苦手なお船に2時間。早朝、香港を出て中国へ。ヘアアートのロス社がかなりのアイテムを製造している工場に行きました。
広すぎて写真に撮れませんでしたが、会社の敷地内にはいくつも工場ビルと隣接して従業員用アパートが何棟も立ち並んでいます。殆どの工場と寮は必ずセット。かなり裕福でないと車を所持できないため、工場一帯が働く人々の村になります。

ここではオートではなく、各種ミシンのような機械にそれぞれ人がつき、異なるパーツを完成させていく流れ作業です。

写真はヘアアート・ジャパンで人気のサイバークリップ。ひとつひとつにバネを入れていく作業です。丁寧な作業を見て、1本1本、大事に使わなきゃ、と改めて思います。

箱に入っているのはメーカーや美容室にとって必需品の人毛。中国やインドなど各国の経済発展に伴い、髪を打って生計をたてる人が減少しているため、人毛の値段は上がるばかりです。
ちなみに白人毛はさらに希少価値が高く、ピュアな白人毛の入手はほぼ不可能とされています。ヘアアートには貴重な独占ルートがあるので安心ですが、世間で出回っているものを見ていると、アジア人毛をブリーチしたり、カラーしたものが主流なように見受けられます。白人毛=ダメージ毛ではないので、プロセスした白人毛を使用すると、テスト結果などがブレてしまうという弊害が懸念されます。

水産漁業みたいですが、人毛の洗浄作業が行われている光景です。ちょっとわかめみたい。

大元の人毛卸先(インド)が、グラム数を稼ぐためにナイロンでできた人工毛を混ぜたりすると、写真のように、洗浄工程でナイロンが炭酸水と反応し、白い固まりになって出てきます。
どうしてバレることをやるんでしょうね。

こうしてプロセスされた人毛がウィッグやマネキンなどの商品に使用されていきます。写真は人毛をマネキンに埋め込んでいく作業です。見慣れない方はびっくりするかもしれませんが、サロンでのトレーニングやテクニックの説明に使用するマネキンです。きちんとしたカラーリングやパーマの結果を見るためには人毛を使用しなくてはいけません。

最後にヘアアートの中国オフィスへ寄って近況報告会。帰りは電車で香港へ戻りました。やれやれ。
アメリカの都市と日本でしか生活したことのない私には、今日見聞きした製造現場や取引にまつわる現実は、ショッキング過ぎたり、消化するのに時間がかかりそうな面もありましたが、これから私がしていく様々な決断に必ず影響を与えそうです。本当有意義でした。多少ヘビーでも、ものづくりを支えている製造現場を知ること、そして改善策を考えていくことは私の義務ですからね。
ヘアアート・ジャパンを立ち上げたときから、将来日本での製造を可能にしていくことが私の大きな目標です。グローバルなネットワークを駆使することも大事ですが、少しでも日本でできることを増やしていくことで日本のリソースの見直しに貢献できたらな、と。都市のネットカフェ難民や過疎地の高齢失業者など、歪にバランスを崩した日本の就職事情を目の当たりにしています。一度走り始めた回転を逆回転にしていくことはものすごいエネルギーが必要。すぐに解決できるものではないかもしれませんが、常に問題意識をもって何事にも取り組んでいくことが、大小関わらず、企業に求められていると思います。全ての判断に選択肢があるわけですから。